課題〔傘と長靴〕
いつも雨の日ナナちゃんは、赤い長靴を履いていた。
お鼻にピンクの風船を、結んだぞうさんがついていた。
ある日雨の日ナナちゃんは、赤い長靴を履かなかった。
お気に入りの長靴は、きつくて履けなくなっていた。
いつか雨の日ナナちゃんは、いつも長靴を履かなくなった。
替わりに可愛い雨傘が、お気に入りになっていた。
小さな赤い長靴は、綺麗な傘がお出かけすると、大好きなナナちゃんを思い出して、ちょっと淋しそうに見上げてた。
傘は増えたり、いなくなったり、そのうち長靴もいなくなった。
でも。
小さな赤い長靴を、ナナちゃんは忘れていなかった。
「ほら、可愛いでしょう? ママ、同じの履いてたのよ」
真新しい長靴を持ったナナちゃんは、ナナちゃんそっくりのちいさなミミちゃんに履かせてあげた。
「これにすりゅ」
ミミちゃんは嬉しそうに跳ねて、ナナちゃんは目を細めて見つめてた。
まだぶかぶかの長靴だけど、ミミちゃんは雨を待っている。
長靴がミミちゃんを大好きなこと、ちゃんと解っているんだ。
そしてきっと、忘れない。
〔了〕