恋話

scene 6 ― 21age

 その少年は、高校の後輩の後輩。
 私が卒業したあと、私が付き合った後輩の下で委員をしていたそうだ。社会人になってから、図書委員の同窓会をやりますと連絡が来た。なんとも縦の連結が強い、不思議な図書委員たち。実に私が結婚したあとまで、“図書委員同窓会”は存在した。

 そこで初めて会った彼は、何ともお調子もので、がんがん盛り上げていた。一通りはしゃぎ終わると私の隣へやってきた。
「これが噂の2代目委員長かぁぁ! 光栄っす!」
「ちょっと、噂ってなによぉ、あんたたち何言ってんのよぉ」
このやり取りが妙に受けたらしく、彼は帰り際に住所を教えてきた。
「連絡くださいよー、待ってますからぁー」

 当時彼は19歳だった。当然酒は飲めない。
「19歳でも酒の席にジュースで付き合うなら、また声かけるよ」
絵葉書を送ってみた。しばらくして、葉書が来た。
「はい!いつでも行きます!姉さんについていきます!」
でっかい字で書かれたその文字に大笑いしてしまった。
 そして、彼と付き合う事にした。

 蓋を開けてみると、彼はいつだって真剣だった。最初持っていた、お調子者の彼は極度の照れ屋の裏返しで、大人びていて、いつも私を抱きかかえようと頑張っていた。でも、私はどうしても年下のイメージが強くて、“しっかりしなきゃダメだろ?”とか言われると、カチンと来たりもした。

 冬になるといつも出掛ける清里のペンションに、彼と行った。冬の清里はガラスキで、くっついて散歩するのにはちょうど良かった。
「あなたはエリーのイメージなんだ、最後の人って気がしてさ」
「20歳で最後なんて」
笑う私を彼はKissで塞いだ。彼のはじめてをもらった。

 夜間の専門学校に通う彼とは、いつも私の仕事が終わる時にデートしていた。いつも行く地元の喫茶店でも、すっかり常連だった。そんな中、彼の学校が休みの日、他の常連さんと3人でぶらぶらと帰っていたとき、私が気付かない間に、常連さんと彼が話をしていたらしい。
 あとでその常連さんは言った。

「彼ねぇ、ぐずってたよ。どうしてもあんたのはじめての彼には敵わないって。結局、あんたが好きなのは、はじめての彼なんだって言ってたよ」

 ……事実だったのかもしれない。
 結局、私はあの人を追いかけて、年下の彼に預け切れなかったのかもしれない。だんだん私の仕事が遅くなって、彼と会う時間はなくなってしまった。彼も、学校とバイトで忙しくなって疎遠になってしまった。

 彼は、私がはじめての人で、良かったんだろうか。
 最後の人になれなかった私で。

<scene 5  scene 7>


inserted by FC2 system