恋話

scene 5 ― 18age

 その少年は、高校で出来た友人に勧められて入った同人誌のメンバーだった。

「付き合わない?」

 はじめて集まりに行った時、その少年は私の隣に座り、いきなりそう言ってきた。話が軽くて面白かったが、初対面でそう言うことを言う人は、さすがに用心した。
「手紙出すよ、住所教えて」
 彼は自分の名刺を出した。それは黒のプラステックに金の印刷の名刺だった。
「なんかカッコいい!」
「なんなら作ってやるよ、今度作りに行こうよ」
軽妙な話し方に、私は押されて会う事になった。

 彼は裕福であったが、父親はたまに顔を出す程度だった。お母さんという人も個性的で、妙に人懐っこく親しくしてくれた。電話して彼がいなくても、お母さんと盛り上がる事も良くあった。
 彼は本当にお金の感覚が人と違った。趣味でドラムをちょこっと叩きたいからって、部屋全部を防音にして、ドアは厚さ5pもあった。
 当然その部屋に入れば、中で何をしても外に声は“聞こえない”。

「束縛はきらいじゃないよ、してくれよ、俺もするから」

 彼の口癖だった。でも、お互い学生だし、あっちはともかくこっちはお金をかけて毎週彼のうちに行くのも大変だし、なにより今一つ信じていなかった。手紙も最初の数通だけだったし、衝動買いで2万もするでっかいウシのぬいぐるみとかを、ポンと買って置いてあるのだ。感覚が違う。
 運転の練習で親父の車に乗ったら鼻が折れた、と言うのでびっくりして行ったら。

「さすがベンツだよなぁ、鼻だけで済んだし」
 白のベンツのオープンカーをお釈迦にしてしまっても平気なのだ。

 そんなある日。集まりで友人達からひょんな事を聞く。彼と付き合っている、と言うメンバーがいたのだ! 聞いてみるとほぼ同じ手口……。しかも、彼女もまた、感覚について行けていなかった。
 私達は、お互いのもらった手紙の内容や、言われたことを突き合わせていって、最後は笑うしかなかった。

「二人で、同じ内容の手紙を出してみようか」

 結局彼には、二人が知っている事がわかった。でも彼は平然と言った。

「選べないよ? 好きだから」

 当然私は、遠慮した。彼女がその後遠慮したのかどうかは解らないが……。

 しばらくして、1度だけ引っ越したという奴の家に行ったことがある。お母さんは相変わらず明るい方だった。
「ロスへ行くんだ」
「へぇ、相変わらず感覚が違うなぁ……」
「遊びに来れば?」
「簡単に言うな! 行けるかっ!」
 数年後、その天秤の片方だった彼女が、旅行した折に奴を訪ねたという。その時はチャイニーズの女の子と同棲していたそうだ。

 束縛……。
 されるのは好きだったんだろう。でも、出来ない人だった。

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