恋話

scene 1 ― 14age

 その少年は、俗に言う不良であったが、今にして思えば、ちょっとオヤジの煙草をふかしたりはしても誰かを虐めたりはしない、少しアウトローな子であった。

 幼馴染で、小さい時から知っていた。
 私は小4の時に近所に引っ越して転校したが、中学になってまた同じ学校になった。陸上部であった私は部活に明け暮れ、2年になったある日、彼がうちの部に入る噂を聞いた。

 同じクラスでもなかったし、引越してから話したことすらなかったが、たまたま、渡り廊下ですれ違ったので声をかけた。
 私は、ずっといじめられっこであまりクラスの人間とは口をきかなかったが、彼は幼馴染だったこともあって普通に口をきいてきた。

「うちの部に入るんだって?」
「ああ、でも迷ってる」
「やめたほうがいい、めちゃめちゃキツイよ、うち」

 そうやって二人が話していたのを、奴のクラスの連中が見つけて囃した。その時やっと、こいつは男なんだなぁ、と実感した。

 周りには否定しながら結局こっそりと付き合おうかと、交換日記を始めた。屋上に出る扉の前にあった壊れた机の中に大学ノートを隠して、お互いに一人でそっと取りに行った。

 幼い文章。2行しかないとき。
 私の名前が1面に書いてあった時。
 はじめてのデートは出来たばかりのサンシャイン60の展望台。間違って59階行きに乗って、高級なレストラン前でエレベーターが開き、中2の二人は慌てて閉じて、中で大笑いした。

 ある日私の唯一の友達が、こう言った。

「私、○○くんが好きなんだ」

 私は隠していたから、その話を聞くしかなかったが、どこかで友達とあいつを秤にかけた。そして……友達が勝った。何故だかはわからないが、私は友人を取ったのだ。そう思い始めると、なんとなく彼とはギクシャクしだして、最後の言葉は“オレ、あいつと付き合うよ”だった。

 しばらくして、友人と彼が仲良く話しているのを見かけた。友人は嬉しそうに彼のことを語った。私は、良かったねと言いながら、ひどく冷静だった。

 結局友人は、私の秤の中で勝ったのではなく、私に勝ったのだと気付いたのは、随分経ってからだった。付き合ってたんだと言った時、彼女は言った。

「知ってたよ、だから言ったんだもん。まさか譲ってくれるとは思わなかったけど」

 少し苦い初恋の記憶。

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