ドジ

私はドジって良く言われる。
自分でもつくづくそう思う。
こないだも、ファイル上書きしちゃって
取りだしたくても もうなくて、
課長にこっぴどく怒られた。

昔っからそう。
好きな人がいるって相談して
どうしようどうしようって言ってる間に
じれったくなった友達が
話をつける、なんて、あれよあれよで
お互いに好きになっちゃった。
謝られるこっちが情けないよね。

空が綺麗だな〜って見上げてて
転んだりするのはいい方で
何にもない平らな道でも、転んじゃったりするの。
みんなは、ぼーっとしているからだって
そんな風に言われちゃう私だけど。

好きな人がいるんだ。

業者の人なんだけど、今日はドキドキ。
あの人の誕生日。
ちゃんと同じ会社の人から上手く聞き出して
彼の好きなブランドもチェックして
ハンカチ買ったんだ。

事務所の片隅で
彼がそろそろ帰るって言ってる。
私はこっそり先回りして、
車のそばで、さも仕事してるみたいにウロウロ。

あっ、来た!

「あ、どうも〜お邪魔しました」
「あ、いえ、あのぉ……」

頑張れ!また、まごまごしてる間に
気持ち伝えられないぞ!

「これ、誕生日って聞いたんで……」
買ってあった包みを差し出した。
「えっ?いいの?もらって。開けていいかなぁ〜」
彼は一瞬開けようとして、手を止めた。

「なんか、汗でべたべただぁ、勿体無いから……」
彼が取りだしたのは
何と私が買ったハンカチと同じ物だった!

なんて私ってドジなんだろう。
彼が好きなブランドなら
彼が持ってないわけないじゃん!!
「あっ、あのっ!」
そう言ってる間に彼は包みを開けてしまった……
もう駄目だ!同じ物なんてきっと喜ばないわ!

彼は一瞬、止まって、そして笑った。
「凄いなぁ、僕と同じもの選ぶなんて、よっぽど気が合うんだね」

車を見送りながら、また私はぼーっとしていた。
「ありがとう、大事に使うよ」って彼の言葉と
携帯が裏に書かれた名刺を持って。

〔了〕

……あとがき…… 
これは「懐かしの少女漫画チックに書いてみよう♪」が、テーマでした(^^ゞ
必ず二重で、マツゲが数えられて、瞳の中に星があって、
背中にはカケ網と、点描と、大きな薔薇(当然全て手書き)を背負って
「高校生のくせに栗毛だ!ぐりぐりパーマだ!」とか
「うわぁ〜ひざ上何センチなんだ、その制服!」とか
「絶対こんな股下が長い奴はいない!」みたいな、70年代ラブコメ(^.^)
(これ全部解ったら、あなたは私と同じ過去があります(爆))
それをちょっと、オフィス風に書いてみたかったんですぅ♪ 結構楽しんで書いた一作です。


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